堀病院めまいセンター2023年4~12月の診療ならびに良性発作性頭位めまい症の治療報告
おかげさまで、2023年4月3日に『めまいセンター』を開設して、無事に2023年を終えることが出来ました。この間、病院、スタッフの皆さまの頑張りもあり、患者様の受け入れも順調に推移しており、感謝に堪えません。
開設後、これまで2274人(新規患者557人、再来患者 延べ1717人)の患者様に来院いただきました。月別の患者数では新規患者数は60人前後で推移していますが、再来患者数は徐々に増加しております。
今のところ、センターの目標に掲げた病名診断率100%は達成されております。
さて、これまでの診療報告では、患者さんの性、年齢、診断名などを報告していましたが。センター開設後9か月たって、やっと。治療成績を報告することが出来るようになりました。最初は良性発作性頭位めまい症の治療報告です。
良性発作性頭位めまい症の治療報告
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は末梢性めまいの原因の中でも最も多い疾患で、めまいセンターでも、新規来院患者数の30.0%(167人)がBPPVでした。この中で、経過を追えた151例について検討しました。
BPPVは原因となる半規管によってタイプ分類されますが当センターでは151例中、後半規管型が119 例(78.8%)、外側半規管型が19 例(12.6%)でした。後者のうち半規管結石症は7 例(4.6%)、クプラ結石症は10 例(6.6%)、ライトクプラは2例(1.3%)でした。前半規管型は5例(3.3%)、複数の半規管が原因となる多半規管型は8例(5.3%)でした。患側は左が患側のもの75例、右側74例、両側2例と特に左右差は見られませんでした。
年齢はBPPV全体では平均59.0±16.3歳、男性は41人で17~85歳、平均60.1±15.7歳、女性110人で16~87歳、平均74.5±6.2歳で、女性は男性の約2.7倍で、年齢分布では、男性は50歳代、女性は61歳代にピークを認めました。
治癒成績ですが、当科受診からめまい症状が自覚的にもなくなり、他覚的にも自発眼振・頭位眼振・頭位変換眼振が完全に消失するまでの日数を検討しました。
図のように、BPPV のタイプ別では治癒率には大差なく、およそ2~3 週以内に50%が治癒していました。しかし、発症から3か月以上も持続していた難治例も6 例(約4.3%)みられました。また、再発例も6例認められました。さらに、高齢者では治癒までの期間が延長するかどうかについて、65歳未満と65 歳以上を比較した結果、65歳未満では後半規管型、外側半規管型ともに治癒までの日数は中央値で14日でしたが、高齢者で治癒までの期間が外側半規管型で21日、後半規管型で28日と長い傾向がみられました。
このように、めまいセンターで治療した良性発作性頭位めまい症の患者さんに関してはBPPV全体で85.4%、最も多いタイプの後半規管型で92.3%の治癒率でした。この治癒率や治癒までに要した日数に関しては、他の大学病院やめまいセンターの成績と比較しても遜色ない数字であり、今後は診断率100%だけでなく、治癒率100%を目指して頑張っていきたいと思います。また、今後もメニエール病やPPPDなど、他のめまい疾患の治癒率や診療状況についても報告していきたいと思います。
最後に2024年も堀病院めまいセンターをよろしくお願いいたします。