<コラム11>血圧130超えたら危ない?

~高齢者は血圧の変動、下がりすぎに注意!~

最近のテレビCMで「血圧130超えたら」という言葉をよく耳にしますね。でも、若い人もお年寄りも、すべての人が血圧を130以下にする必要があるのでしょうか?お年寄りの中には、血圧を下げる薬を飲んでいる人もいて、それが原因で「めまい」や「ふらつき」が起きることもあります。

では、高血圧とは何でしょうか?体の中では血液が絶えず流れています。心臓が収縮することで血液が全身に送り出され、これが血管に圧力をかけることで血圧が生じます。この血管への圧力が高い状態が高血圧なのです。高血圧の基準は、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2020」によれば、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上です。自宅で測る場合は、135/85 mmHgが目安とされます。血圧は日常で変動します。運動すると血圧は上がり、ストレスを感じても上昇しますが、これらは一時的な変動であり、高血圧とは呼ばれません。高血圧は慢性的に血圧が高い状態のことです。

高齢者の場合、高血圧患者は増加し、70歳以上の70%以上が高血圧とされています。高齢者の高血圧にはいくつか特徴があります。血圧の変動が大きく、夜間に血圧が降下しないことや、朝に血圧が上がることなどがあります。

血圧をどれくらい下げるべきかについての基本原則は、年齢によって異なります。高血圧患者において、降圧の目標は以下のように考えられます。65歳から74歳までの方は、血圧が130/80 mmHg未満であることが目標です。一方、75歳以上の方は、140/90 mmHg未満を目指します。特に理由がない限り、75歳以上の方で血圧を130未満に下げることは通常は勧められません。ただし、高齢者であっても、糖尿病や慢性腎臓病の合併症がある場合、以前に心臓病や脳卒中の経験がある場合、または高血圧に関連する他の合併症(例:動脈硬化、心不全など)がある場合、あるいは高血圧治療が有益な効果をもたらすと考えられる場合では血圧を130/80 mmHg以下に制御することが勧められることがあります。これにより、心血管リスクが低減し、腎臓を保護するなどの利点が期待されるからです。要するに、個々の状態によって最適な血圧の範囲が異なるのです。だから、血圧130mmHg以下にとらわれることはありません。医師は患者の健康状態やリスク要因を考慮して、最適な降圧目標を決定します。自分の血圧目標については、医師と相談し、具体的なケースに合わせたアプローチが大切です。

高齢者で高血圧の方が「めまい」や「ふらつき」を経験することはよくあるでしょう。これにはいくつかの原因が考えられます。

一つ目は高血圧そのものによるもので、回転するような「めまい」ではなく、むしろ不安定な感覚やふわふわ感があります。ただし、これは実際にはそこまで頻繁に見られません。

二つ目は特に高齢者の高血圧患者でよく見られるもので、高血圧と関連する血管の問題が原因です。この場合も「浮動性めまい」や「回転性めまい」が現れることがあります。脳の血管に障害があると、めまいや脳底動脈の循環不全によるめまいが生じます。これらの状態は高齢、喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、心臓血管疾患の家族歴など、高血圧以外の血管の問題のリスクが高い人に多く見られます。

三つ目は、実はこれが一番多いのですが、血圧を下げる治療に伴うもので、高血圧治療に使われる薬の副作用や、血圧が急激に下がることによる脳の血流低下が関与しています。特に高齢者や糖尿病がある人のなかで、立っているときに血圧が下がっていく場合や、急激な立ち上がりで血圧が下がりすぎる場合で、めまいやふらつきが生じることがあります。また、高齢者は、自律神経の調節機能が低下しているので、急激な血圧の変動に対する適応能力が低く、急速に血圧が下がるとふらつきが起こる可能性があります。

高血圧治療に使われる薬には、血管を拡張させたり心拍数を抑制したりするものがあります。これらは一般的には有効で安全ですが、一部の薬はめまいやふらつきの副作用が出ることがあります。具体的な薬としては、カルシウム拮抗薬のアムロジピン、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のイルベサルタン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬のエナラプリルなどがあります。これらの副作用には、血圧が下がりすぎて、めまいやふらつき、それに伴う脱力感や転倒が含まれます。特に高齢者はのどの渇きに気づきにくいので脱水症状が起きやすく、気を失う危険性が増します。他の薬物との相互作用にも注意が必要で、複数の薬を使用している場合は特に気をつける必要があります。

もしも降圧薬によるめまいが疑われる場合は、まず主治医と相談し、血圧をゆっくり下げるように調整することが大切です。降圧治療を始める際には、急激に血圧を下げないように留意する必要があります。めまいが起きた場合、家庭血圧(家で測った時の血圧)を2~3か月かけてゆっくり下げ、目標血圧を達成するように調整していきましょう。

 

高血圧患者がめまいを訴えてめまいセンターに来院した場合、まずは問診により合併症や薬の服用状況を確認し、耳や脳に問題がないかを検査します。また、起立性低血圧の有無を確認するシェロングテストや、家庭血圧の記録を確認することで、降圧薬によるめまいの原因を特定します。症状が続く場合には、降圧薬の調節や他の治療法を検討し、内科の先生との連携を大切にしながら患者さんと協力して治療を進めます。

ふらつきを予防するための対策

医師の指示に従う:処方された薬物の服用方法や量を正確に守りましょう。

①血圧のモニタリング: 定期的に血圧を測定し、目標血圧範囲内に保つようにしましょう。血圧の急激な変動が起きていないかを確認することが重要です。

②立ち上がる際の注意: ベッドや椅子から急に立ち上がると、血圧が急激に下がることがあります。立ち上がる際にはゆっくりと行い、体が適応するのを待つようにしましょう。

③十分な水分摂取: 高齢者は脱水症状になりやすいため、適切な水分摂取が必要です。適度な水分摂取は血圧の安定にも寄与します。

④食事の改善: 塩分やカフェインの摂取を控えることが血圧管理に役立ちます。バランスの取れた食事を心がけましょう。

⑤適度な運動: 定期的な軽度の運動は血圧をコントロールするのに役立ちます。医師の指示に従い、無理のない運動を行いましょう。

 

高血圧の治療や血圧管理に関する具体的なアドバイスは、個々の状況によって異なる場合があります。必ず専門医の指導を仰ぎ、適切なケアを受けるようにしましょう。

 

降圧剤の副作用によるめまいのチェックテスト

□高血圧があって、血圧を下げる薬を飲んでいる

□体がフワフワするようなめまいが続いている

□血圧の薬が増えたり、変わったりした後から、めまいがおこるようになった

□立ちあがる時、食事の後にめまいが起こる

□家庭血圧が120以下で、時に100位になることがある

□目の前が暗くなったり、気を失いそうになったりしたことがある

 

4つ以上の項目に当てはまれば、降圧剤の副作用によるめまいかもしれません。

「めまいセンター」を一度受診してみませんか。

 

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