<コラム12>乗り物酔い

~どうして起こるの?どうやったら防げる?~

 

患者Aさん

「私、なんだか乗り物酔いしやすくて、どうすればいいか悩んでいるんです。乗り物酔いってどうして起きるんですか?」

めまいセンター長 工田

「乗り物酔いは昔からある問題で、船や電車、車、最近では宇宙でも起こります。あなたのように乗り物に酔いやすい人だけではなく、誰でも条件が揃えば酔ってしまいます。それは、3つの条件が重なるときです。」

その条件とは以下の3つです。

乗り物酔いを引き起こす条件

・不規則な情報や強い刺激が目から入ってくる(眼反射)

・不規則な加速や振動、激しい揺れを体で感じる(脊髄反射)

・睡眠不足などのコンディション不良(自律神経反射)

めまいセンター長 工田

「これらの反射の限界を超えてしまったとき、酔いという状態になります。そして、最後のひとつとして、精神的な不安も関わることがあります。乗る前からドキドキしていると、それが原因になることもあります。でも、大丈夫です。乗り物酔いを克服するポイントがあります。これらの条件の逆を意識的に作り出すことで、酔いを防ぐことができます。例えば、目や体の刺激を抑えるように心がけたり、体調を整えたりすることが大切です。」

患者Aさん

「でも、私ってバスの中で何もせずにも酔いやすいんです…」

めまいセンター長 工田

「それは乗り物酔いのメカニズムが小脳に関係していることからきています。小脳は体のバランス感覚を制御していていますが、刺激が多すぎて処理できない状態になると酔ってしまいます。特に3歳から12歳ぐらいは小脳の発達時期で、この時期の子どもたちは乗り物に酔いやすいです。逆に、赤ちゃんはまだ小脳が発達していないので酔わず、20歳前後からは小脳の老化が始まります。だから、大人になると酔いにくくなります。ただし、個人差が大きくて、あなたのように大人になっても酔いやすい人もいます。乗り物酔いをしにくくするには小脳の慣れが大事です。バスにたくさん乗ることで、小脳がバスの動きに慣れていって酔いにくくなります。それにトレーニングも可能です!たとえば、ミラーボールを見ることや、後ろ向き歩き、そして睡眠や生活習慣も整えることが効果的です。」

患者Aさん

「でも、効果はすぐに出ないんですよね…」

めまいセンター長 工田

「そうですね。トレーニングは時間がかかりますし、無理をすると逆効果になることもあります。日常的に取り入れながら、ゆっくりやっていくことが大切ですよ。」

患者Aさん

「それで、当日の対策はどうすればいいんですか?」

めまいセンター長 工田

「当日は体調を整えてリラックスすることが大切です。大人であれば少量のアルコールを摂るのもいいし、ガムを噛むことも効果的です。そして、乗り物の特性に合わせて心の準備も忘れずにおきましょう。乗車前には十分な睡眠と、空腹や満腹を避けることも大切。締め付けの強い服装は避けて、自分に自信を持って乗ることも心の安定につながります。乗車中も、刺激を極力抑えるように心掛けてください。頭を動かさずに進行方向を見ると、三半規管の動きも抑えられます。窓からの風景を見たりするのも良いです。ゲームや読書は避けることがポイントです。

最後に、酔ったときの対処法もあります。目をつぶらず、顎を引いて頭を固定し、バスの中で動かない1点を見つめるという方法も効果的です。アロマを持ち歩くのもいいです。  だから、気長にトレーニングして、当日はしっかり対策して、バス旅を楽しんでください。乗り物に弱い人も、ポイントを押さえて楽しい旅行ができるようになります!」

 

さらに具体的なトレーニングとして以下の4つの試技を紹介しましょう。

1  頭を振る訓練

真正面に腕を伸ばし、親指の先を50cm先を見つめながら、頭を(1)左右30度に振る(2)前後30度に振る(3)左右30度に傾ける運動を各10往復、1日2回繰り返します。

2 目を動かす訓練

腕を伸ばし、親指の先を上下左右に動かし、(1)左右(2)上下に、頭を動かさずに交互に見つめます。各10往復1日2回繰り返します。

3 体勢を変える訓練

(1)仰向けと起き上がった状態

(2)寝返りを左右に

(3)椅子に座った状態と立った状態、各10往復1日2回繰り返します。

4 足を動かす運動

(1)足を閉じて立つ、継ぎ足(片方の足のつま先にもう片方の足のかかとをつける)で立つ、という2種類の動作を、目を開いた状態と閉じた状態で各5~10分、1日2回繰り返します。

(2)足踏みを目を開いた状態と閉じた状態で各50~100歩、1日2回繰り返します。

(3)1日1,000~5,000歩、歩きます。

図表引用 平衡訓練/前庭リハビリテーションの基準―2021年改訂― Equilibrium Res Vol. 80(6) 591~599,2021

 

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