<コラム15>「めまいセンター」って何ですか?

「めまいセンター」とは、めまいやふらつきに関連する症状の診断と治療を専門に行う医療施設のことです。近年、いくつかの大学病院でこのような専門センターが設立されています。それでは、なぜ「めまいセンター」なのでしょうか。その理由はいろいろあると思いますが、一番の理由はめまいの患者さんの悩みを解決するためです。

 めまいに対する患者さんの悩みは数えきれないほどあると思いますが、主なものとしては、

  • めまいが起こったが、どこの病院、診療科に行けばよいか?
  • 自分のめまいの原因、病名は何か?めまいは治るの?

の2つが考えられます。

まず、最初の悩みである、「どこの病院、診療科に行けば良いの?」です。患者さんの訴える「めまい」にはいろんな状態があります。よく、新聞広告などで見かける、「浮動性のフラフラめまい」、「動揺性のヨロヨロめまい」、「立ちくらみ性のクラクラめまい」、などというのはめまいの症状であって病名ではありません。医学的には、めまいの症状(種類)は、「回転性めまい」、「浮動性めまい」、「立ちくらみ(眼前暗黒感)」、「平衡機能障害」に分類されます。これらの症状の反復の有無、誘因、持続時間、聴覚症状(難聴、耳鳴り、耳閉塞感)の有無などにより、めまいの鑑別診断をして病名を決定していきます。めまいの診療に専門的に携わっている医師であれば、これらの問診によりある程度の鑑別診断ができます。しかし、患者さんの訴える「めまい」には、さまざまな症状が含まれており、正しい診断をしにくくしています。身体の不快感のことを漠然と「めまい」と表現する患者さんも数々経験してきました。患者さんが口にする「めまい」が、そもそも何を指しているかを明確にしなければなりません。それを基に、まずは、「危ないめまいと危なくないないめまいを鑑別して中枢の障害が疑われれば、脳神経内科、脳神経外科へ紹介することとなります。それ以外、めまいの原因の多くを占める耳が原因のめまいでは耳鼻科の受診、精神的なものは精神科や心療内科、血圧異常や不整脈などが原因の場合は循環器内科へなどというように、患者さんのめまいを治療するための最適な道筋を示すゲートキーパーとなっているのが、この堀病院「めまいセンター」なのです。

次に、「自分のめまいの原因(病名)は?めまいは治るの?」です。脳神経内科では「中枢性(頭が原因)ではない」と言われ、耳鼻咽喉科では「前庭性(耳が原因)ではない」と言われ、それではどうすればよいのかと、途方に暮れる患者さんも少なくないかと思います。このような事が生じる理由は、2つあると思います。一つは診断技術、診断機器の問題、もう一つは心因性など、頭や耳以外が原因のめまいの存在です。

診断技術、診断ツールの問題とはどういうことでしょうか。最近、ビデオヘッドインパルス検査、前庭誘発筋電図などの診断機器の発達により様々な新しい疾患概念が出現してきました。例えば前庭神経炎には、上前庭神経炎、全前庭神経炎、下前庭神経炎の3種類があることが分かってきましたが、この区別はこれらの機器を用いた検査を実施しなければ診断できません。また、前庭性片頭痛、前庭発作症、加齢性平衡障害、小児反復性めまい、などはそもそも疾患概念を知らないと原因不明とされかねません。残念ながら、診断技術や診断機器による問題は、起きうることです。その結果として患者さんを押し付け合う形となり、病院難民となる患者さんが出てきます。そのような場合の解決方法の一つが「めまいセンター」への受診です。きちんとした診断が出来れば治療法も決まり、今後の見通しも明らかとなり、めまいの予後は良くなります。

もう一つの心因性めまいも診断、治療が難しいもののひとつです。心因性めまいとは、めまいの発症に精神神経学的疾患が関与するものです。不安障害やうつによるめまいと言えば分かりやすいかと思います。最近、慢性めまいとして注目されている持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)もこれに含まれます。患者さんの態度や心身医学的問診票などで、ある程度簡単に疑うことができます。しかし、前庭性疾患や中枢性疾患ではないので、耳鼻咽喉科や脳神経内科を受診しても「異常はない」と言われてしまうことがしばしばあります。また、精神科や心療内科の先生に相談しても、

「めまいなので、耳鼻咽喉科で診てもらってください。」

と言われてしまう事もあります。精神科や心療内科の多くの先生が心因性めまいの診療にあまり慣れていない印象はぬぐえません。

それでは、心因性のめまいには、どういった治療が行われるのでしょうか。まず、詳細な問診、心理テストなどを行い、それらを基に機器での検査を進め、心因性めまいかPPPDかの鑑別を行います。それによって、個々の患者さんに見合ったカウンセリング、認知行動療法、あるいは薬物療法などを行います。場合によっては前庭リハビリテーションを指導することもあります。いずれにせよ、比較的長期間の治療を要することが多いです。

 「めまいセンター」の外来には心因性めまいの患者さんも多く、これらの治療を行っています。しかし、精神科との区別がなかなか難しい領域になるので、一般の耳鼻咽喉科医や脳神経内科医に同様の対応を要求することはできないと思っています。心因性のめまいを疑った場合も、やはり「めまいセンター」を活用して頂くのがよいと思います。

 

上記のことをふまえて、具体的に堀病院「めまいセンター」の特徴や役割をまとめてみました。

 

  1. 専門医による診察

堀病院「めまいセンター」には、めまいの専門医(日本めまい平衡医学会専門会員、めまい相談医)が在籍しています。めまいの原因は耳の異常(内耳の問題)、神経系の問題、心血管系の問題など様々であるため、様々な分野の医師と協力しながら診断、治療を行っています。

  1. 詳細な検査

めまいの原因を突き止めるために、堀病院「めまいセンター」では大学病院と同等もしくはそれ以上の検査機器を駆使して詳細な検査を行っています。

  • 聴力検査: 内耳の異常を確認するための検査です。
  • 平衡機能検査: 体のバランスを保つ能力を評価するための検査です。
  • 画像検査: MRIやCTスキャンなどを使って、脳や内耳の状態を確認します。
  • 血液検査: 体の健康状態や他の病気の有無を確認します。
  1. めまいの原因究明と多角的な治療アプローチ

めまいの正確な診断を行い、その結果に基づいて、堀病院「めまいセンター」では多角的な治療を提供します。

  • 薬物療法: めまいの原因や症状に応じた薬を処方します。
  • リハビリテーション: バランス訓練や運動療法を行い、めまいの改善を図ります
  • 心理的サポート: めまいによる不安やストレスを軽減するためのカウンセリングやサポートを提供します。
  1. 予防と生活指導

堀病院「めまいセンター」では、再発を防ぐための予防策や生活指導も行います。例えば、日常生活での注意点や食事、運動のアドバイスなどを提供しています。

 

堀病院「めまいセンター」は、めまいやふらつきに苦しむ方々にとって重要な施設でありたいと考えています。専門的な知識と最新の設備を活用して、正確な診断と効果的な治療を提供し、患者さんの悩みを解決し、生活の質を向上させることを目指しております。昨年4月に「めまいセンター」を開設して以来、約1,000人のめまい患者さんに来院していただき、ネットでも「福山 めまい」で検索すると上位に来るようになり、それを見て来院される患者さんも増えました。また、他の病院からも多数の患者さんを紹介していただけるようにもなりました。

来院患者数は他の大学病院の「めまいセンター」と比べても引けを取らない数字となっており、めまいの病名診断率は100%を維持しております。

もし、めまいの症状がある場合や、めまいについての悩みがある場合には、堀病院「めまいセンター」での診察を検討してみてください。

 

注 *はこれまでのコラムで解説した病気や症状です。ぜひ、参考にしてみてください。

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