<コラム16>「めまいと食生活」

私たちの体は、さまざまな栄養素を必要としています。これらの栄養素が不足すると、体の機能がうまく働かなくなり、めまいを引き起こすことがあります。加えて、今年の夏は猛暑で水分不足から、脱水症、熱中症になり、めまいを起こして来院される患者さんもいらっしゃいます。めまいの原因となる代表的な栄養不足には、単に水分不足だけでなく、低血糖、貧血、カルシウム不足、ビタミン不足などがあげられます。

  1. 低血糖

低血糖は、血糖値が低下した状態であり、気が遠くなるようなめまいが生じることがあります。特に、激しい運動やダイエット中、または糖尿病の方が空腹時に経験することが多いです。この場合、糖質を含む食品(ガム、飴、クッキー、チョコレートなど)を摂取することで症状が改善されることがあります。ただし、糖尿病の方は食生活とインスリン投与の管理が必要です。

  1. 貧血

貧血は、赤血球が不足する状態であり、めまいや立ちくらみを引き起こします。貧血の中では赤血球の材料になる体内の鉄が不足することで起こる鉄欠乏性貧血が最も一般的です。鉄は「必須ミネラル」の一種で、食事から摂取する必要のある栄養素です。鉄分はレバーや赤身肉、赤身の魚などのヘム鉄と、野菜や卵、牛乳などの非ヘム鉄に分けられます。ヘム鉄は吸収されやすく、非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が高まります。ビタミンCを多く含む野菜類,果実類、いも類、茶類などの摂取が有効です。赤血球の材料となるたんぱく質も大事で、良質なたんぱく質は良質な赤血球やヘモグロビンを作り出してくれます。ビタミンB12、葉酸も血液を作るために必要なビタミンです。葉酸はビタミンの一種で、この2つは胃から吸収され、血液を作るために非常に重要な役割を持ちます。胃がんで切除を受けた患者さんは、この2つの栄養素を吸収することができないので深刻な貧血に悩まされることもあります。ビタミンB6はヘモグロビンが作られるときの補助を行ない、ビタミンEは赤血球の老化を防ぐ栄養素です。抗酸化作用を持ち、赤血球を老化から守ります。これが不足すると、溶血性貧血になることがあります。

そのほかに、銅、リン、コバルトも重要です。これらの栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

  1. ビタミン不足

特にビタミンB群(ビタミンB1、B6、B12)は神経の健康に不可欠です。これらが不足すると神経の働きが悪くなり、めまいを引き起こすことがあります。ビタミンB1の不足はウェルニッケ脳症という病気を引き起こします。ウェルニッケ脳症とはビタミンB1の不足によって脳がダメージを受ける病気です。意識障害・運動失調・眼球運動障害などが特徴的な症状です。今いる場所がわからない・まっすぐ立ったり歩いたりすることができない・眼球の運動が制限されるなどの症状があります。主な原因にはアルコールの過剰摂取・栄養不足などがあります。 疑わしい人には血液検査・頭部MRI検査などが行われます。治療にはビタミンB1(飲み薬・点滴)を使用します。ビタミンB12の不足は前述したように貧血や神経障害を引き起こします。ビタミンCとビタミンEも重要で、これらは疲労回復やアンチエイジング、めまい感の改善に役立ちます。ビタミンCは血管に付着している活性酸素(老化成分)を取り除き,血管の働きを活発にする働きがあり,栄養失調の症状にも有効です。前述したように鉄の吸収も助け、循環器疾患の改善にも役立ちます。ビタミンCを多く含む食品としてはキウイ、バナナ、ミカン、パパイヤなどがあります。さらにビタミンCには免疫力を高める効果や怪我や病気を早く治す作用もあるため、体が弱っているときはたくさん摂りたいビタミンです。ただし、熱に弱いので火にかけないようにする必要があります。しかしジャガイモのビタミンCは熱に強いので火にかけて調理する料理でも,比較的多くのビタミンCを摂取することができます。

また,ビタミンE(α―トコフェロール)は活性酸素を取り除き,コレステロールを排出して動脈硬化を防ぎ,栄養失調により起こるめまいに有効とされています。ビタミンEを多く含む食品には油脂類,種実類,魚類,調味料,茶類,野菜,穀類などがあり,これらの摂取が有効である。利尿作用があり,体内の余分な水分を排泄する働きがあり疲労回復を早め,ストレスを緩和させる働きがあります。血管をサラサラにする効果もあります。

  1. カルシウム不足

カルシウムは骨の形成に欠かせない栄養素ですが、日本人は慢性的にカルシウム不足です。カルシウムが不足すると、骨粗しょう症だけでなく、中耳や内耳の骨にも影響を与える可能性があります。カルシウムは小魚、豆製品、緑黄色野菜、乳製品に多く含まれ、マグネシウムやビタミンDと一緒に摂ることで吸収が促進されます。

  1. その他の栄養素

亜鉛やマグネシウムもめまいの原因となる精神的ストレスを軽減する効果があります。亜鉛は脳の機能を正常化し、マグネシウムは血管を拡げて脳に酸素を送りやすくします。これらの栄養素を含む食品を摂取することが重要です。(亜鉛を多く含む食べ物は、魚介類では生かきに最も多く含まれています。その他、煮干し、たらこ、しらす干し、かつお節、ほたて、うなぎ蒲焼きなど。肉類では豚レバーに最も多く含まれています。その他、牛もも肉、鶏レバー、鶏もも肉など。野菜類では、切り干しだいこん、枝豆、しそ、たけのこ、ごぼうなど。豆類・ナッツ類ではきな粉、油揚げ、納豆、厚揚げ、あずき、焼き豆腐など。穀類では、精白米、そばなど。卵類では全卵、牛乳、プロセスチーズなどです。)

  1. 食事との関係

健康的な食事を心がけることで、必要なビタミンや鉄分を十分に摂取することができます。以下のポイントを押さえるとよいでしょう:

  • 朝食をしっかり摂る: 朝食を抜くと血糖値が下がり、めまいを感じることがあります。
  • 十分な水分補給: 脱水症状もめまいの原因になるため、適度な水分補給が大切です。
  • バランスの取れた食事: 野菜、果物、全粒穀物、タンパク質をバランスよく摂取することが重要です。

 

めまいは、栄養不足やビタミン、鉄分の不足が原因で起こることがあります。バランスの取れた食事を心がけることで、これらの栄養素を十分に摂取し、めまいを予防することができます。日常の食事に少し気を配ってめまいに負けない体を作りましょう。

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