堀病院めまいセンター2024年度 1年間の診療報告
堀病院めまいセンター2024年度の診療報告
医療法人 徹慈会 堀病院 めまいセンター長
工田 昌也
おかげさまで、2023年4月3日に『めまいセンター』を開設して、無事に2年間を終えることが出来ました。この間、病院、スタッフの皆さまの頑張りのおかげで、患者さんの受け入れも順調に推移しており、感謝に堪えません。
2024年度は、1年間で3,638人(前年比112.0%)(新規患者726人、再来患者 延べ2,912人)の患者さんに来院いただきました。月別の患者数では新規患者数は60人前後でほぼ変化ありませんが、再来患者数は前年比116.5%と増加しております。めまいセンター開設後の2年間では、6,888人、(新規患者1,476人、再来患者 延べ5,412人)となりました。今年度も引き続いて、センターの目標に掲げた病名診断率100%は達成されております。
2024年度の新規患者さんの年齢は6~92歳(平均58.5±19.0歳)、男性は9~91歳(平均59.7±17.5歳)、女性は6~92歳(平均57.9±19.7歳)で男性、女性ともに40~70歳代が中心で、70歳代が最多でした。この傾向は2023年度とほぼ同じでした。2年間合計でも年齢は6~99歳(平均57.9±18.6歳)、男性は9~99歳(平均59.0±17.8歳)、女性は6~97歳(平均57.3±19.1歳)で男性、女性ともに40~70歳代が中心で、70歳代が最多でした。
男女比は男性249人、女性477人で女性が男性の約1.9倍でした。2年間合計では男性491人、女性985人で女性が男性の約2.0倍でした。
新規患者さんの病名は、2024年度は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)が206人(28.9%)と最も多く、めまいの代表とされるメニエール病103人(14.4%)、前庭性片頭痛20人(2.8%)、前庭神経炎29人(4.1%)、突発性難聴19人(2.7%)、前庭性発作症23人(3.2%)でした。その他、ハント症候群3例、自己免疫性内耳疾患1例、上半規管裂隙症候群1例などがありました。持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は27人(3.8%)、心因性めまい60人(8.4%)でした。そのほか、小児反復性めまい2例、小児前庭性片頭痛1例などが認められ。耳以外の原因では、脳循環不全33人(4.6%)、椎骨脳底動脈循環不全7人(1.0%)、起立性調節障害83人(11.6%)、頸性めまい8人(1.1%)などでした。特殊なものとして、脳梗塞や出血が明らかになった人が5人、小脳炎が1人、聴神経腫瘍が2人、傍腫瘍性神経症候群が1例、いらっしゃいました。加齢性平衡障害やフレイルは10例(1.4%)でした。昨年との比較では前庭神経炎の症例が増えているのが分かります。この理由としては、vHIT検査を初診時より積極的に活用するようになってきた結果、早期診断例が増えてきたと考えられます。
2年間合計では、開設後しばらくの間は、PPPD、心因性めまい、前庭性片頭痛、前庭性発作症などの、これまで診断困難な病気や新しい疾患概念の病気で、これまで正確な診断がされておらず、めまいに悩んでいた患者さんが初期に多く来院したことからこのような病名の割合が多くなっていましたが、時間がたつにつれ、それが一段落した2年間の合計では、より正確な病気の発症頻度を表していると思われます。疾患別ではやはり良性発作性頭位めまい症(BPPV)が441人(30.1%)と最も多く、めまいの代表とされるメニエール病199人(13.6%)、前庭性片頭痛62人(4.2%)、前庭神経炎43人(2.9%)、突発性難聴28人(1.9%)、前庭性発作症38人(2.6%)、前庭機能低下(両側含む)48人(3.3%)でした。持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は85人(5.8%)、心因性めまい122人(8.3%)でした。耳以外の原因では、脳循環不全100人(6.8%)、椎骨脳底動脈循環不全21人(1.4%)、脳梗塞、出血9人(0.6%)であり、その他、起立性調節障害154人(10.5%)、頸性めまい20人(1.4%)、加齢性平衡障害、フレイル20人(1.4%)でした。
平衡機能検査数ですが、2024年度は重心動揺検査が1年間で1,430回(前年比102.2%)、cVEMP 376回(前年比242.6%)、本年度より開始したoVEMP 36回、vHIT 675回(前年比375%)、OKN・ETT 172回(前年比86%)、標準純音聴力検査6,777回でした。特に、vHIT、VEMPの検査数が飛躍的に増加しており、ひとえに言語聴覚士の皆さんの努力や頑張りによるものと思っております。
来院のきっかけですが、本年度は、他医療機関からの紹介が30.9%と最多となり、次いで以前に当病院にかかったことがあるが24.9%でした。この2年間の活動でで、近隣医療機関に当センターの存在が知られてきた結果と考えております。また、ネットはHPで検索をしてみて(19.3%)という患者さんも増えてきており、積極的に広報活動を行ってきた結果と思っております。知人や家族からの紹介(19.7%)も多くなっており、引き続き正確な診断、誠実な治療を行い、患者さんから信頼を得て、知り合いに紹介していただけるように皆で頑張っていきたいと思います。
『めまいセンター』では、めまいを正しく診断し、患者様と二人三脚で一緒にめまいを治していくことを目指しております。それに加えて、診療の実態を皆様にこうして報告するとともに、めまいセンターで得られた知見を積極的に学会でも発表するようにしています。2024年度は、「第83回日本めまい平衡医学会」で、当院から言語聴覚士と私自身による2題の発表を行い、その他、広島市立大学、広島大学との共同研究を報告しました。加えて「第28回福山医学祭」では言語聴覚士による2題の発表を行いました。その他、プレスリリースやマスコミでの報道も行われております。うれしいことに、当院の言語聴覚士4名が「日本めまい平衡医学会認定の平衡機能検査士」の資格を得ることが出来ました。1施設で4名もの平衡機能検査士を有する医療機関は他には無く、日本一のめまいセンターを目指すうえでの第一歩となりました。2025年度においても、これまで同様、病名診断率100%を維持するだけでなく、すべての患者様のめまいが治るよう、『正しい診断、適切な治療でめまいは治る』を目標に日本一のめまいセンター目指して頑張っていきますので、『堀病院めまいセンター』をこれからもどうぞよろしくお願いいたします。
学会発表
1. 川村美穂、小坂範樹、廣兼大地、藤井礼華、河野達也、石川修司、平木信明、宇高毅、工田昌也:新しい平衡機能検査の導入. 第28回福山医学祭、11月10日、2024年、福山
2. 廣兼大地、川村美穂、小坂範樹、藤井礼華、河野達也、石川修司、平木信明、宇高毅、工田昌也:平衡機能に携わる言語聴覚士~堀病院めまい診療報告を通して~. 第28回福山医学祭.11月10日、2024年、福山
西田 学、小野田裕司、井下里香、工田昌也:めまいの主訴から直腸癌の診断に至った傍腫瘍性神経症候群の1例.第83回日本めまい平衡医学会、2024年11月14日、名古屋
小野田裕司、西田 学、井下里香、工田昌也:めまいと難聴を伴った髄膜炎の1例.第83回日本めまい平衡医学会、2024年11月14日、名古屋
常盤達司、工田昌也:左右に振動する指向性のある音が健常成人の重心動揺に及ぼす効果.第83回日本めまい平衡医学会、2024年11月14日、名古屋
工田昌也、藤井礼華、廣兼大地、小坂範樹、川村美穂、宇高 毅:両眼同時記録ETT、OKNによるPPPD患者と心因性めまい患者の比較検討.第83回日本めまい平衡医学会、2024年11月15日、名古屋
報道
めまいセンターについて、プレスリリースを発表いたしました。 : 2024.10.1
PR TIMES
福山市市政記者クラブにてニュースリリースを発表 2024年10⽉1⽇
医療法⼈ 徹慈会 堀病院プレスリリース
診断の難しい“めまい””ふらつき“を専⾨に診断・治療を⾏う『めまいセンター』を開設しました
【広島】「めまいセンター」開設、めまい相談医3人体制-工田昌也・堀病院めまいセンター長に聞く◆Vol.1目標は病名診断率100% 2025年1月10日 (金)配信m3.com地域版
【広島】センター開設1年で3250人が受診、目指すは治癒率100%-工田昌也・堀病院めまいセンター長に聞く◆Vol.2 患者の男女比は1対2、兵庫県からの受診も2025年1月17日 (金)配信m3.com地域版
経済リポート 1868号 2025.2.1
ひと 堀病院めまいセンター センター長 工田昌也
堀病院めまいセンターセンター長 工田昌也さん国内屈指のめまいの専門医 | 経済リポートWEB版